特許事務所の料金表が公開されていない理由と、自分に合った事務所を選ぶための6つの基準を弁理士が解説。料金の安さより重要な「相性」や「説明の分かりやすさ」など、知財ビギナーが失敗しないための選び方を徹底ガイドします。
特許や商標の手続きを考えたとき、多くの方が最初につまずくポイントがあります。
「特許事務所のホームページを見たけれど、料金表が載っていない……」 「いくらかかるか分からないのに、怖くて問い合わせできない」
この悩み、実は知財ビギナーの方から最もよく聞かれるものです。 メニューのない高級店に入るようで、不安になりますよね。
事務所が料金表を公開していないのは、 多くの場合、出願業務が「完全オーダーメイド」の仕事であり、画一的な料金設定が困難という事情があります。つまり、料金の安さよりも、あなたの事業内容を理解し、専門的な話を分かりやすく説明してくれる「相性」や「誠実さ」こそが、事務所選びで失敗しないための最重要ポイントとなります。
この記事では、現役弁理士の視点から、料金表がない中で「相性の良い事務所」を見極めるための6つの基準を分かりやすく解説します。
なぜ多くの特許事務所は「料金表」を公開していないのか?
まず、弁理士側の事情を正直にお話しします。 情報を隠したいわけではありません。
特許や商標の出願業務は、「完全オーダーメイド」の仕事だからです。
「家を建てる」のと同じです。
例えば、工務店に「家を建てるのにいくらかかりますか?」といきなり聞いても、即答は難しいです。 広さは? 土地の条件は? こだわりは? これらを聞かないと、正確な見積もりは出せません。
特許事務所も同じです。 ひとくちに「商標登録」といっても、以下の要素で作業量が全く変わってきます。
- 商標(ネーミング)の状況: これから考えるのか、決定済みか
- 事業の範囲: どの商品・サービスまで権利を取得するか
- リスクの高さ: すでに似ている商標が他社にあるか
「一律料金」のリスク
むしろ、安易に「一律〇〇万円!」と掲げている場合、必要な調査や検討が省かれている可能性もあります。
多くの事務所が料金を公開しないのは、 「案件ごとに最適なプランで見積もりたい」 という誠実さの裏返しでもあるのです。
とはいえ、依頼する側としては不安になると思います。 だからこそ、「安さ」ではなく「説明の誠実さ」で見極める必要があります。
Webサイトだけで分かる「相性の良い事務所」6つのチェックリスト
電話やメールをする前に、Webサイトを見るだけでチェックできるポイントが6つあります。
①【得意分野】「何でもできます」より「〇〇専門」
「特許全般扱います」というデパート型の事務所より、ビギナーには強みが明確な事務所がおすすめです。
- 技術分野: IT、バイオ、機械、日用品など
- 法域: 特許に強いか、商標・ブランドに強いか
「あなたの事業分野(例:アプリ開発、ロボット、ヘルスケア)」の実績がトップページにあるか確認しましょう。
②【プロセス】業務の「流れ」が明確に示されているか
単に「特許を取ります」というだけでなく、依頼から完了までのステップを具体的に示しているかを確認しましょう。
「初回相談 → 事前調査 → 出願書類作成 → 出願 → 審査対応」など、段階ごとに「そのフェーズで何をするか」 や 「どれくらいの期間がかかるか」 がWebサイトに明記されている事務所は、知財ビギナーにとって安心感につながります。
③【料金説明】「費用の決まり方」が書いてあるか
詳細な料金表がなくても、
- 「初回相談は無料です」
- 「出願費用の目安はこちら」
- 「お見積もりは無料作成します」
- 「費用が変動する理由」を解説している
このような記載があったり、どの時点でどのような費用が発生するかの説明があれば、安心して検討できる事務所と言えます。逆に、費用について一切触れていないサイトは、知財ビギナーにとっては判断材料が少なく、慎重に検討すべき事務所となります。
④【人柄】代表弁理士の顔が見えるか
弁理士はあなたのビジネスパートナーです。 プロフィールを見て「相性」を推測しましょう。
- 経歴はあなたの業界に近いか?(メーカー出身、IT企業出身など)
- 写真の雰囲気は話しやすそうか?
⑤【分かりやすさ】ブログなどが「専門用語なし」で読めるか
相性を判断するうえで重要な手がかりの一つです。その事務所のブログやコラムなどの情報発信しているサイトを1つ読んでみてください。
- 専門用語をかみ砕いて説明しているか?
- 法律の話ではなく、読者の悩みに寄り添っているか?
「文章の分かりやすさ」=「相談時の説明の分かりやすさ」です。記事の分かりやすさは、相談時の説明のしやすさと高い関連性があると言えます。 記事が難解な事務所は、対面での説明も分かりにくい可能性があるため、慎重に判断しましょう。
⑥【対象】「自分に近い層」を向いているか
その事務所の主なクライアント層を確認します。
- 「個人・スタートアップ歓迎」とあるか
- 中小企業向けの記載があるか
自分に近い立場の人を歓迎している事務所なら、話がスムーズに通じる可能性が高いです。
候補を3社に絞るための「10分リサーチ手順」
たくさんの事務所を比較する必要はありません。以下のステップで3社程度に絞りましょう。
✅ ステップ1:得意分野をチェック 自分の事業(IT、VR、ロボット等)に関する記載があるか?
✅ ステップ2:ブログを1分読む 「読みやすい」「この先生なら話しやすそう」と感じるか?
✅ ステップ3:料金ポリシー確認 「見積もり無料」や「費用の目安」の記載があるか?
ここまで絞り込めれば、あとは実際に問い合わせてみるだけです。
最終決定は「初回相談」で。相性の合う事務所を見抜くポイント
候補の事務所へ実際に問い合わせるとき、以下のポイントで最終判断をしてください。また、メールだけでなく、所属する複数の弁理士と面談して話してみるのもよいでしょう。
⚠️ こんな事務所は要注意
- こちらの話を遮って、一方的に話す
- 「絶対登録できます」と無責任に保証する
- 専門用語ばかりで説明が分からない
✅ 信頼できる事務所の対応
- 「リスク(デメリット)」を隠さずに説明してくれる
- 事業の背景や将来の展望まで聞いてくれる
- 「分からない言葉はありませんか?」と気遣ってくれる
相談していて「なんだか怖い」「質問しづらい」と感じたら、その直感は正しいです。遠慮なく別の事務所を検討しましょう。
まとめ:「価格の安さ」よりも「相性」で選ぼう
予算の関係上、選択基準として「価格の安さ」を優先せざるを得ない場合は確かにあります。ただ、知財の世界では、「安い=正義」とは限りません。 単に手続きをするだけでなく、
- あなたのビジネスを理解し
- 専門的な法律用語を分かりやすく翻訳し
- 事業を守るための参謀になる
これができて初めて、支払った費用の元が取れます。
「料金表がないから怖い」と諦めないでください。 Webサイトの言葉の端々に、その事務所の誠実さは必ず表れています。
まずは気になる事務所のWebサイトを読み、「この人なら話せそう!」と思える専門家を見つけてみてください。そして、正式に依頼する前に、料金はもちろんのこと、気になることは遠慮なく聞いておきましょう。それが、あなたの事業を長く守るための第一歩です。
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以上


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