世界的デザイナーと弁理士による”体験型”セミナー
2020年1月29日、日本弁理士会関東会は、知的財産の初心者向けワークショップセミナー『プロが伝授する顧客の心に響くネーミングとパッケージ』を、弁理士会館にて開催しました。
このセミナーは、中小企業やベンチャー企業の経営者に、知的財産の役割について理解を深めてもらうことを目的として、日本弁理士会関東会の中小企業・ベンチャー支援委員会が企画した“体験型”のセミナーです。
“体験型”セミナーとは、参加者が頭と手を使って課題に取り組み、その成果を発表し、それに対して講師や弁理士からフィードバックを行う双方向型のセミナーです。従来の“座学型”のセミナーのように、講師から参加者に一方的に知識を提供するのではなく、ビジネスシーンでの知的財産の活用を疑似体験してもらい、それに対してプロがアドバイスを行うことで、より実践的な知識を身につけてもらうことを目的としています。
同委員会では、これに先行する2019年12月4日に『中小企業の経営者必見!!60分でまるわかり「売れる商品の仕組み」』と題して、商品企画段階における「売れる商品」の考え方をテーマにしたワークショップセミナーを開催しました。その続編的位置づけとして、本セミナーは、企画された商品を実際に売る段階で重要となる「ネーミング」及び「パッケージデザイン」をテーマに取り上げました。
#当日の構成
*第1部
ネーミングのコンサルティングに実績のある弁理士とパッケージデザインに長けたデザイナーによるセミナー講義。
*第2部
参加者に「商品名とパッケージデザイン」を考えてもらうワークショップ&講評
デザイナーとして、㈱イデアクレント代表取締役 篠塚正典氏を特別講師にお迎えしました。篠塚氏は、1998年の長野オリンピックのシンボルマークをデザインした世界的に活躍する一流デザイナーです。近年では、デザインの力で企業を元気にしたり、若手デザイナーの育成に尽力するなどご活躍の場を広げています。
今回、中小企業やスタートアップを知財で支援していくとの弁理士会関東会の活動に共鳴頂き、篠塚氏と中小企業・ベンチャー支援委員会とのコラボセミナーの開催となりました。“デザイナー×弁理士”のコラボレーションでどんな化学変化が起きるのか? 篠塚氏も、私たち弁理士も、ワクワク、ドキドキしながら一緒に作り上げたセミナーです。
第1部のネーミング講義
第1部の前半では、山田龍也弁理士が、商品名のネーミングに関する講義を行いました。具体的には、商品名を変更したことで一躍ヒット商品となった実際の事例、商品名の役割とネーミングのコツ・ポイントを紹介。
商品名には、商品の魅力を伝える役割があること、顧客の信用を貯める器としての役割があること、更には、ネーミングはセンスよりもネーミングの基本原則を理解することが大事であること、を初心者にも分かり易く解説されました。
第1部のパッケージデザイン講義
第1部の後半では、篠塚氏が、商品パッケージをデザインする際のポイントを解説。実際の商品パッケージを事例として、パッケージデザインの手順を具体的に紹介しました。
商品パッケージには、商品名、商品説明(キャッチコピー)、商品(中身)の画像、背景の図形、色彩などの様々な要素があります。商品パッケージをデザインする際に、これらの要素をどのように組み合わせれば消費者の目線を上手く誘導させることができるのか等について詳細な説明がありました。
私たちが普段何気なく手にしている商品パッケージ。その裏側にはここまで緻密に計算されたデザイン手法が存在するのだということを紹介する、インパクトのある講義でした。
第2部のワークショップはグループワーク形式
第2部のワークショップでは、第1部で学んだネーミングやパッケージデザインの考え方を早速実践してもらいました。セミナーで習得した知識をその場で使ってもらうことにより、知識の定着を図り、実際のビジネスシーンでの活用を疑似体験して頂くためです。
第2部はグループワーク形式。参加者をいくつかのグループに分け、各グループで課題を検討し、その結果を発表してもらいました。参加者29名を4-5人ずつ、6つのグループに分け、各グループには弁理士1名が加わり、効果的な議論が行われるようアドバイスを行いました。
ワークのテーマは「外国人観光客に人形焼を売りたい!in浅草」
近時のトピックスであるインバウンド対応を考えて頂く課題が出されました。
#課題
「浅草の老舗人形焼屋を切り盛りするおばあさんが、外国人観光客向けの人形焼を売ろうと決めた。外国人観光客に刺さるような商品コンセプト、商品名、パッケージデザインを考えましょう」
制限時間は60分。最初の20分間で商品コンセプトと商品名を考え、残りの40分間で商品パッケージをデザインしてもらいました。
グループワークでは、企業内での議論を想定し、グループ内の意見をまとめる進行役、発表用シートを作成する書記役、プレゼンを行う発表役等、それぞれ役割を決めて進行されました。
成果発表
ワーク終了後は、各グループの成果発表会。本セミナーの狙いは、ただ単に商品名やパッケージデザインを考えるのではなく、一つの商品コンセプトを定め、それに沿った一貫性のある商品名やパッケージデザインを考えるという点にあります。
この点を意識してもらうため、発表の際にはターゲット設定(どんな外国人に売るか)、商品コンセプト、商品名、パッケージデザインについて説明して頂きました。
「外国人観光客に人形焼を売る」という難しい課題設定に対し、各グループからは趣向を凝らした商品名やデザイン性の高いパッケージが発表されました。
短い制限時間でのワークでしたが、講義内容を活かそうという意図が感じられるものでした。他グループの発表と見比べることで、自分たちのグループに足りない部分を意識することができたはずです。
講評
特別講師の篠塚氏と、山田龍也弁理士が各グループの発表内容について専門的な観点から講評が行われました。
中小企業が自分たちの作った商品に対し、専門家からフィードバックを受けることができる機会はなかなかありません。今回のように、自分たちが考えた商品名やパッケージデザインについて専門家からアドバイスを受けることで、デザイナーや弁理士の専門サービスの価値を感じてもらうことができたものと考えております。
まとめ「売れる商品と知的財産の関係」
最後に、山田龍也弁理士により、「売れる商品の作り方」と、商品名やパッケージデザインと「知的財産(権)との関係性」について解説されました。
「売れる商品の作り方」とは? 本日取り扱った商品名とパッケージデザインが、ただの「良い商品」を「売れる商品」に変えるためのアイテムであること、これらの相乗効果を発揮させるには商品名とパッケージデザインに一貫性を持たせることが重要であること、が説明されました。
「知的財産(権)との関係性」に関しては、本日取り扱った商品名とパッケージデザインが知的財産(権)、特に意匠権や商標権と密接に関係していること、知的財産権を意識することで商品力が向上し、模倣抑止の効果が得られること、複数の知的財産権を組み合わせることで商品アイデアを多面的に保護することができること(知財ミックス)が説明されました。
本セミナーを通じて、売れる商品とするためには、商品の品質や機能の向上だけではなく、商品名やパッケージデザイン等を用いた商品の伝え方が重要であること、商品名やパッケージデザインが知的財産(権)と密接な関わりがあること、デザイナーや弁理士を利用することの重要性などが、中小企業の経営者にも理解して頂けたものと考えております。
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