研究成果をビジネスに。大学発スタートアップの成長を加速させる弁理士活用術

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はじめに

 大学で生まれた画期的な研究シーズ。それを社会に実装し、世界を変える可能性を秘めているのが大学発スタートアップです。近年、多くの研究者の方々が自らの手で事業を立ち上げるケースが増えています。

 しかし、その道のりは決して平坦ではありません。特に、事業の根幹となる研究成果を知的財産としていかに守り、活用していくかという知財戦略は、スタートアップの成否を分ける極めて重要な要素です。

 「特許出願なら、大学の知財部やTLO(技術移転機関)がやってくれるから安心」

 そう考えている先生も多いかもしれません。しかし、本当にそれだけで十分でしょうか? 本記事では、大学発スタートアップが直面しがちな知財の課題と、その課題を解決し、事業を成功に導くために本当に必要な「弁理士」の活用術について、一歩踏み込んで解説します。

大学発スタートアップが直面する「知財の壁」

起業を目指す研究者の方がまず理解しておくべきは、大学における発明の取り扱いです。

壁①:発明の権利は誰のもの?

 大学での研究活動から生まれた発明は、原則として「職務発明」として大学に帰属します。そのため、研究者個人が勝手に特許出願をしたり、事業で使ったりすることはできません。これが、一般的なスタートアップと大きく異なる最初のポイントです。

壁②:どうやって事業で使うの?

 ご自身の研究成果を事業で活用するためには、権利者である大学から「実施許諾(ライセンス)」を受けるか、権利そのものを「譲渡」してもらう必要があります。この大学との交渉が、事業化に向けた最初の重要なステップとなります。

  • ライセンス契約: 大学にライセンス料(ロイヤルティ)を支払うことで、発明を実施(製品の製造・販売など)する権利を得る方法。
  • 権利譲渡: 発明に関する権利そのものを、大学からスタートアップ企業が買い取る方法。

どのような契約を結ぶべきか、その条件は適切かなど、専門的な判断が求められます。

「特許出願」だけではない!スタートアップを成功に導く弁理士の役割

 さて、知財のことで専門家に相談しようと考えたとき、一口に「弁理士」といっても、実は様々な専門家がいることをご存知でしょうか。弁理士には、それぞれ得意とする技術分野(バイオ、IT、化学など)や、主に担当する顧客の属性(大企業、中小スタートアップ、大学など)があります。

そのため、相談者の研究内容や、大学発スタートアップという特殊な立場を深く理解してくれる弁理士を見つけることが、成功への第一歩となります。

 通常、特許出願は大学の知財部やTLOが提携している特許事務所に依頼します。そのため、研究者の方が個人的に弁理士を探してきても、その弁理士に出願を依頼することは難しいのが実情です。

 しかし、諦める必要はありません。大学発スタートアップの成功には、発明を的確に権利化する出願・権利化の専門性に加え、事業全体の成功を見据えて伴走してくれるコンサルティングの視点を持つ弁理士も近年増加しています。

 このような弁理士は、以下のような点で発明者の強力なパートナーとなります。

(1)事業に活きる「強い特許」の育て方をアドバイス

 特許は、ただ取得すれば良いというものではありません。競合他社が容易に参入できないような、事業の核を守る「強い特許」に育て上げることが重要です。優れた弁理士は、発明者の発明を深く理解し、最適な形で権利にすることを目指します。

 それに加えて、事業戦略に寄り添う弁理士は、先生の事業計画まで踏み込んだ上で、

  • 「将来の事業展開を見据え、どのような権利範囲を目指すべきか?」
  • 「権利の価値を最大化するために、どのような実験データを追加取得すれば説得力が増すか?」

 といった、研究開発の段階から戦略的なアドバイスを提供します。出願・権利化という重要な専門業務に、こうしたコンサルティングの視点が加わることで、スタートアップの知財戦略はより強固なものになります。

(2)大学との円滑な交渉をサポート

 前述の通り、事業化には大学とのライセンス契約や権利譲渡が不可欠です。研究者としての立場と、大学組織の事情の両方を理解した弁理士は、

  • 契約内容が自社にとって不利なものになっていないかのチェック
  • ライセンス料の交渉や、より良い条件を引き出すための助言

など、円滑で有利な権利承継を実現するための交渉をサポートします。

知財を核とした資金調達・事業戦略を構築

 スタートアップにとって、資金調達は非常に重要です。ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家は、事業の将来性を評価する上で「知的財産」を厳しくチェックします。

 弁理士は、特許だけでなく、会社のブランドを保護する商標や製品デザインを守る意匠なども含めた総合的な知財ポートフォリオの構築を支援し、投資家に対して自社の強みを効果的にアピールするためのアドバイスも行います。

【大学知財部・TLOご担当者様へ】新たな技術分野への挑戦をサポートします

 日々進化する大学の研究。それに伴い、「これまで取引のあった特許事務所では対応が難しい、全く新しい技術分野の特許出願を検討している」といったケースも増えているのではないでしょうか。

「この分野に強い弁理士を、どうやって探せばいいのだろう…」
「複数の事務所に声をかけて比較検討するのは手間がかかる…」

 そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弁理士紹介制度の活用をご検討ください。当サイトには、化学、バイオ、AI、量子コンピュータなど、多種多様な専門性を持つ弁理士が登録しています。

 貴学の新たな挑戦に最適なパートナーを、効率的に見つけるお手伝いができます。この機会に、ぜひ弁理士紹介制度の活用をご検討いただけますと幸いです。

まとめ:最適な弁理士を見つけ、研究成果を未来へ繋げよう

大学発スタートアップの成功には、優れた研究開発力はもちろんのこと、それを守り、育て、事業価値を最大化するための知財戦略が不可欠です。

特許出願の実務は大学の専門部署に任せつつも、ぜひご自身の事業を成功に導くためのパートナーとして、コンサルティング能力の高い弁理士に相談するという選択肢を持ってみてください。

 弁理士紹介制度は、あなたの研究と事業を深く理解し、成功へと伴走してくれる弁理士を見つけることができます。まずは、あなたの想いや事業構想を、気軽に話してみることから始めてみませんか?

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